サッカーを今治の目玉にしたい(岡田武史)


スクラップブックから
讀賣新聞2018年8月31日朝刊
守破離」自由への道
サッカー元日本代表監督
岡田武史さん(62)



(撮影:鈴木竜三)


   西野朗さん(今大会の監督)を
   「運がいい」と言う人がいますが、違う。
   確かにドイツやスペインなど世界最高峰のリーグで
   力をつけた選手らが、代表で進んで動いた。


   ただ、自ら動き出す組織を作るのは至難の業。
   選手に全て任すと、ばらばらになる。
   代表が勝つために何をすべきか、
   世界中の誰よりも考え抜いた、西野さんの功績です。
   (略)


   バルセロナのコーチの発言で、
   目から鱗(うろこ)が落ちます。
   彼らはプレーモデルという
   芯がある上での自由だったのに、
   僕らは自由だけをまねてしまった。



   僕は今、こう考えます。
   自由な所から自由は出てこない。
   縛りがあるから、それを破り、
   驚くような発想が生まれる。
   武道に「守破離(しゅはり)」という言葉があります。
   師匠の教えをまず守り、次に破り、最後は離れる。
   サッカーにも縛り、原則集が必要ではないか。
   (略)


   インタビューが一段落し、
   スポーツとナショナリズムの関係に話を振ると、
   ここでも岡田さんは即答した。


   「ナショナリズムをあおる面もあるでしょうが」と前置きし、
   「ラグビー(元日本代表監督)の大西鉄之祐さんが
   『闘争の倫理』にこんなふうに書いてます」。
   

   戦争に行くと、敵を殺したくなる。
   理性のタガが外れると、人は恐ろしい動物になる。
   スポーツも何としても勝ちたいが、
   ルールがあり、自制する。
   理性を保つ鍛錬になる—。
   

   「僕はそれがスポーツの力だと思います」。
   岡田さんは考える人だ。
                 (編集委員 鶴原徹也)


スポーツの世界に陰鬱なニュースが多い昨今、
思考し、行動し、発言するリーダーの存在に心安まる。
公の場で西野監督をきちんと評価する発言も
なかなかできることではない。
人間は嫉妬とうぬぼれの動物だからね。


岡田武史
FC今治代表。(株)今治,夢スポーツ会長。
1997年、2007-10年、サッカー日本代表監督。
10年W杯ベスト16。


闘争の倫理 スポーツの本源を問う (鉄筆文庫)

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ナショナリズムとは何か (ちくま学芸文庫)

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