クリッピングから
朝日新聞2019年10月31日朝刊
読者投稿欄「ひととき」 助けたはずが救われて
札幌市 高村晴美 主婦 62歳
昨年の夏、近所の路地裏で
「ミャアーミャアー」と鳴いていた子猫を夫が拾ってきた。
真っ白な四肢、背中はグレー色、金色の瞳は好奇心いっぱい。
先住猫の2匹は、遠くから
まるでエイリアンを見るように怖がっていた。
でも、オチビチャンの持って生まれた才能なのか、
スリスリ、ゴロゴロを繰り返し、いつの間にか仲良く。
体をなめ合うようになった。
父を2月に見送った私は、
しばらくは悲しくて泣いてばかりだった。
生前、病室でスマホの中の猫の写真を父に見せると。
楽しそうに笑ってくれた。
私にできないことを、猫たちがしてくれた。
子猫はあっという間に、おデブになった。
ノシノシと歩く姿は、まるで犬。
首につけたちょうネクタイが、あごに隠れて笑ってしまう。
小さな命を助けたと思っていたことが、誤りだったと気づいたのは
父がいなくなったという現実に向き合ってから。
そばにいてくれるだけでいい。
尻尾を振って、「ゴハン、ゴハン」と威張る姿も、
私にとっては励みになる。
オチビチャン(なんていう名前なんでしょうね?)の
人を励ますパワーはたいしたものですね。
我が家も二匹の猫たちと暮らしているので
想像すると楽しくなります。
高村さんの家のほのぼのとした様子が伝わってくる
「ひととき」でした。