クリッピングから
朝日新聞2020年5月14日朝刊
折々のことば 1815(鷲田清一選)
発症者二桁に減り良いほうの
ニュースにカウントされる人たち
生存ということがむきだしになる時、
人にとって日々の糧はあるか、ないかである。
死も同じように、本人どころか家族にとっても、
あるか、ないかである。
誰かの死は一つの死として、
別の誰かの死と比較も計量も交換もできない。
が、人は知らぬまにそういう生の地表を立ち去り、
死を上空から数える側に回っている。
「280歌人新作作品集」(「短歌研究」5月号)から。
人が見落としがちな視点、視野から目を離さず、
俵万智さんは歌を詠んでいる。
鷲田清一さんが「折々のことば」でこの歌を拾い、
「生の地表から立ち去り、死を上空から数える側」に
自分も回っている危うさに気づく。