クリッピングから
讀賣新聞2021年3月1日朝刊
読者投稿欄「気流」
1日遅れ 紙包みの代金
無職 吉村瑞枝 91(静岡県下田市)
こういう大人が身近にいると
どんなにいいだろうと思いました。
半世紀前のある方の記憶、ご紹介します。
50年近く前のある朝、
営んでいた文房具店の商品ケースの上に
小さな紙包みを見つけました。
10円玉数枚が包んであり、
「きのう消しゴムを1個だまってとってしまいました。
ごめんなさい。もう二度としません」
と書いてありました。
小学生の字のようでした。
ひと晩、さぞかし悩んだことだろうと
胸がいっぱいになりました。
翌日、「この気持ちを大切に、
立派な大人になってください」と貼り紙をしました。
忘れられない出来事です。
お金を返しにきた子どもは、
その後、この店に立ち寄ることができたのでしょうか。
もし吉村さんの書いた貼り紙を見ることがあったなら、
優しい言葉にどれだけホッとしたことでしょう。
誰でも出来心を持ってしまうことがあります。
反省する気持ちと、人を許す気持ちを
僕も持っていたいと思いました。
吉村さん、素晴らしいことをなさいました。
(斜め向かいのKさんから白木蓮をいただきました)