編者・武田砂鉄に興味があって手にした。
ナンシー関/武田砂鉄編『ナンシー関の耳大全77
ーザ・ベスト・オブ・ベスト「小耳にはさもう」1993-2002』
(朝日文庫、2018)を読む。
武田砂鉄の解説
「私たちの大切な公文書」から引用する。
ナンシー関という書き手にずっと憧れてきた。
だからこそ、どれだけ距離があろうとも、
同じ列に並ぶのが憚(はばか)られた。
朝日新聞出版・山田智子さんから、
今回の企画について提案された時、
これは自分がするべき仕事ではない、と思った。
だが、ナンシー関の本だけではなく、
横田道生『評伝 ナンシー関』(朝日文庫)を手がけるなど、
そのコラムを伝承してきた編集者からの申し出に耳を傾けると、
今、ナンシー関の作品集を編んで届ける意味を、
とても切に考え抜かれていた。
謙(へりくだ)るよりも、
前のめりに羨望(せんぼう)をぶつけて編み直し、
ナンシー関の作品を改めて読むことのできる循環を作り出すべきだと、
鼻息荒く編集作業に乗り出した。
特定の時代のテレビが作り出す空気について書いているのに、
それが半永久的な説得力を持つという摩訶(まか)不思議。
この半永久的な文書の賞味期限を
更に先延ばしにしたいと思った。
(pp.354-355)
裏表紙に掲載されている本書紹介はこうだ。
2002年、39歳で急逝した消しゴム版画家・ナンシー関。
その言葉は古びることなく、
今なおテレビの中に漂う違和感に答え続けてくれる。
彼女の大ファンで、
日常の違和感を小気味よい筆致であぶり出す武田砂鉄氏が
「小耳にはさもう」から選び抜いたベスト・オブ・ベスト!
消しゴム版画にデフォルメした姿を
文章化するとこうなるのか。
対象の本質を精確に捉えるナンシー関の文章に
何度もシビれ、苦笑した。
黒衣に徹した編者と編集者の見事な仕事。
(本書と連読するとテレビや芸能界への見方が深まる)