目標は「英語で雑談(small talk)のできること」(杉田敏)

クリッピングから
文藝春秋2021年6月号
巻頭随筆「最長寿の語学番組」
杉田敏(すぎた さとし)
(元NHK「実践ビジネス英語」講師)


  1987年、NHKラジオ講座
  「やさしいビジネス英語」を始めました。
  最初はいろいろな方面から
  「ちっともやさしくない」とよく言われたものです。
  (略)


  NHK初めての「ビジネス英語」の番組で、
  タイトルは既に決定していました。
  私が引き受けることになったのは、
  『戦略的ビジネス英会話』という拙著を目にした担当者が
  声をかけてくれたからです。


  「現実のビジネスの場における生きた会話を再現させたい。
  簡単な単語だけを使った入門編の会話のテキストには
  したくないのですが、いいですか」
  というのが受諾の条件でした。


  この番組の一番の売りは、
  「ビニェット」と呼ばれるミニドラマを通じて、
  ニューヨークなどの最前線で起こっているビジネストレンドや
  新しい英語表現を学べるところです。


  現代の国際ビジネス環境を反映するテーマを中心に、
  「世界手洗いデー」「中年の危機」「暗い時代のユーモア」など
  社会性の高い広範囲なトピックを扱ってきました。
  (略)


  ビニェットの多くは、
  国際PRのビジネスに携わる私が実際に経験してきた
  同僚やクライアント、記者との会話などをヒントに組み立てたものです。
  これまで金融から外国政府機関、消費財メーカーなど
  さまざまなクライアントを持ち、
  世界各地でビジネスの現場を経験してきたので、
  ネタに困ることは一度もありませんでした。
  (略)


  途中で「実践ビジネス英語」と改題された番組は、
  最初の放送から三十四年後の今年三月に幕を閉じました。
  その間、一年半降板していたので
  ーーしかし熱心なリスナーが
  NHKに働きかけてくれて復帰したのでーー、
  番組をやっていたのは三十二年半ということになります。
  (略)


  皆さまのおかげで、
  これまでに売れた月刊テキストは、累計三千万部を超え、
  NHKの百年近い放送史においても、
  「最長寿の語学番組」になったそうです。


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僕が杉田先生の番組を初めて聴いたのは
2000年8月のことでした。
ビニェットの面白さに驚き、
翌9月号からテキストを購入することにしました。
以来、2021年3月の番組終了まで欠かさず聴き、勉強してきました。


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リスナーとして20年少々のキャリアは、
この番組のコミュニティでは
せいぜい中堅どころと言ったところです(苦笑)。
番組第1回から最終回まで欠かさず聴いてきた、
海外赴任していた期間も聴き逃したことはないという強者が
存在するからです。


番組が終了して「杉田先生ロス」に陥ったリスナー
あちらこちらに出現しました。
でも、年4回の音声ダウンロードブック
「杉田敏の現代ビジネス英語」が3月に創刊。
長年の番組パートナーだったヘザー・ハワードさんとのコンビも健在です。
放送はなくなりましたが、
このコミュニティでの勉強を楽しく継続しています。


それにしても三十数年前、
杉田先生に番組講師を依頼したNHKプロデューサーは
なんという慧眼の持ち主だったのでしょうか。
名前も存じ上げないのですが、深く感謝します。