12年前の今日、僕を生んでくれてありがとう

クリッピングから
朝日新聞2021年8月28日朝刊
読者投稿欄「ひととき」
おしゃべり通学路


  毎朝、スクールバスのバス停まで、
  小6の息子と一緒に歩いて行く。
  知的障がいのある息子は特別支援学校に通っている。


  息子はおしゃべりだ。
  10分弱の道のりを歩く間、
  車や地球温暖化、将来の夢など、色々な話をする。
  何にでも興味を持ち、話題が豊富で面白い。


  印象深い言葉もある。
  雨の日に歩いていると、
  息子は傘に当たる雨の音が音楽みたいだと言った。
  憂鬱(ゆううつ)だった雨の日が、少しだけ楽しくなった。


  今年の息子の誕生日には通学路で
  「12年前の今日、僕を生んでくれてありがとう。
  生んでくれたから、楽しいことがいっぱいある」
  と言ってくれた。
  誰かが泣くと「悲しいの?」と心配する優しい息子に、
  涙を見られないよう少し前を歩いた。


  通学も6年目。
  歩く間、あいさつを交わしたり
  声をかけたりしてくれる人が少しずつ増えた。
  気にかけてもらえて、とてもうれしい。
  息子は多くの人に見守られて、ここまで成長できたのだ。
  この先も、人に恵まれて幸せに生きてほしい。


  もうすぐ新学期が始まる。
  また一緒に色々な話をしながら歩こう。
  あなたがいてくれるから、
  私も楽しいことがいっぱいある。

     (埼玉県春日部市 秋山優子/パート 47歳)


家からバス停までの10分間。
秋山さんが小学生の息子さんと交わす会話は
なんて豊かで、かけがえのない時間なんだろう。


f:id:yukionakayama:20210901235131p:plain