頭の中で起きたことを見せるような形になりました(ヨシタケシンスケ)

クリッピングから
朝日新聞2022年6月11日朝刊別刷be
「フロントランナー」ヨシタケシンスケさん
(絵本作家・イラストレーター)



    ーー東京・世田谷文学館
      「ヨシタケシンスケ展かもしれない」が開かれています。
      展覧会はやりたいと思っていたんですか。


  絵本作家の展覧会といえば原画展だと思いますが、
  僕の原画は小さいし、色を付けるのが苦手なので
  デザイナーさんに付けてもらっていて、色もありません。
  原画の方が絵本より情報量が少なくなってしまう。


  だからお話をいただいたときにも、
  多分できないと思います、と。
  なので、どうしてそういう絵本になったのかというアプローチ、
  頭の中で起きたことを見せるような形になりました。
  (略)


     ーーヨシタケさんの絵本は、
       子供からも大人から人気があります。


  大人って偉いな、まじめだなって思います。
  自分も年齢的には大人なんですが、
  ずっと子供の目線で世の中を見ている。
  とはいえ大人の事情も分かるから、
  それを子供に向けて翻訳することができると思っています。


  「いつか分かると思うけど、
  今はそう言われたらむかつくよね」って。
  大人も子供もけっこう一緒の部分があるよね、
  でも全部一緒じゃないよね、
  自分と他人も思っているほど違っていないよねって。
  (略)


     ーーコロナ禍は今も続き、ウクライナ危機など、
       世界は不安定さを増していますね。


  こういうご時世では、どんどん決めていく人、
  断言する人が注目されるのは分かるんですけど、
  ことが起きている最中に答えを出すのは難しいはずで、
  まだよく分からないですと言ってくれる人がいたら
  僕は救われるだろうな、と思います。


  すぐに結論を出すべきことと、
  先送りした方がいいことを判断できる力が大事なはずで、
  急ぎすぎちゃだめだって。


  ただ正論だけ言っても誰も聞かないし、
  人は正論を言うのは好きだけど、言われるのは嫌いなんですね。
  だから相手の言葉に翻訳する準備ができて
  はじめて言えることなんでしょう。
  (略)

              (文・大西若人/写真・相場郁朗)



ヨシタケシンスケ展かもしれない」は
世田谷文学館で7月3日まで開催中。


(「ヨシタケシンスケ展かもしれない」公式図録)