松原隆一郎評:笹山啓輔『ドリフターズとその時代』(文春新書、2022)

クリッピングから
毎日新聞2022年9月3日朝刊
「今週の本棚」『ドリフターズとその時代』
笹山啓輔著(文春新書・980円)



  1985年9月の最終回まで16年間で計803回放映。
  視聴率は平均で27.3%、最高50.5%。
  美術費予算が1回800万円という『全員集合』は
  地上波テレビの象徴だったにもかかわらず、論じた書物は多くない。


  本書はドリフを題材に、テレビ番組の本質に迫っている。
  縦糸にはメンバーそれぞれの生い立ちから家庭事情、テレビ局の動向につき、
  膨大な雑誌資料の精緻な読み込みを時系列で配置。


  作家が事前に用意した台本はまず採用せず、
  独裁者としてコント内容を練り上げていく手法で瓜(うり)二つだった
  志村けんいかりや長介が「共演NG」を続ける師弟対決には息を呑む。
  横糸には、ライバルたちのテレビ論が据えられる。
  (略)

                      (松原隆一郎・社会経済学者)