本城雅人『崩壊の森』(文春文庫、2022)

『傍流の記者』『ノーバディノウズ』に続いて読む。
本城雅人『崩壊の森』(文春文庫、2022/単行本:文藝春秋、2019)。



佐藤優・解説から引用する。


  『崩壊の森』は小説の言葉で
  チェシュコ氏(引用者注:ソ連科学アカデミー民族学人類学研究所
  副所長兼学術書記=当時)が学術書で書いたのと同じ内容を説明している。
  ソ連共産党は、西側諸国の政党とはまったく異なる組織だった。
  一党独裁体制の下、共産党が政府や議会、マスコミなどを指導していた。
  共産党は国家そのものだったのである。


  ゴルバチョフソ連共産党書記長は、
  ソ連国家を強化するために共産党独裁体制を打破し、
  複数政党制を導入する計画を極秘裏に進めていた。
  一九九〇年二月五〜七日に行われたソ連共産党拡大中央委員会で、
  共産党独裁放棄が決定されたが、
  それを世界で最も早く、同年二月三日にスクープしたのが
  産経新聞モスクワ支局長の斎藤勉氏だった。


  このスクープによって産経新聞
  一九九〇年度の日本新聞協会賞を受賞した。
  『崩壊の森』は、斎藤氏をモデルにした小説だ。
  東洋新聞の土井垣侑モスクワ支局長の目から
  ソ連末期の政治動向と人間ドラマとして描いている。
  ちなみに私をモデルとしたと思われる
  日本大使館三等書記官(窪田健次郎)も登場する。

                       (pp.419-420)