クリッピングから
朝日新聞2022年9月10日朝刊
「テレビ時評」プロパガンダは過去か
大島新(ドキュメンタリー監督)
(NHK「映像の世紀バタフライエフェクト」サイトより引用)
5日に放送されたNHK総合「映像の世紀 バタフライエフェクト」の
「映像プロパガンダ戦 嘘と嘘の激突」は、
今こそ見るべき圧巻の番組だった。
このシリーズは、毎回世界中のアーカイブ映像をひもときながら、
現代に生きる私たちに有為な知識と大きな示唆を与えてくれるが、
今回ほど身につまされた回はなかった。
ロシアの巨匠エイゼンシュテイン監督の「戦艦ポチョムキン」は、
ナチスの宣伝大臣ゲッベルスに強い影響を与えた。
「優れた政府には優れたプロパガンダが必要だ」
と語るゲッベルスは、こうも言う。
「プロパガンダには秘訣(ひけつ)がある。
何より人々にプロパガンダだと気付かれてはならない」。
この考えに基づいて作られた多くの映画が、
ヒトラーの神格化とユダヤ人排斥に国民を導いた。
(略)
太平洋戦争中の日米のプロパガンダ戦のくだりでは、ため息がでた。
サイパン島の住民たちの悲劇的な自決を、日本は戦意昂揚に利用し、
アメリカは狂信的な日本人像を強調することで戦争の正当性を訴えた。
今もロシアとウクライナでは、主張が食い違う映像が流され、
プロパガンダ戦は現在進行形で行われている。
(略)
<番組概要>
1995年に放送を開始した「映像の世紀」の新シリーズ。
蝶の羽ばたきのような、ひとりひとりのささやかな営みが、
いかに連鎖し、世界を動かしていくのか?
世界各国から収集した貴重なアーカイブス映像をもとに、
人類の歴史に秘められた壮大なバタフライエフェクトの世界をお届けする。
(NHK「映像の世紀バタフライエフェクト」サイトより引用)