やはらかき繭のオーラの脳外科医(駒形光子)

クリッピングから
讀賣新聞2022年11月15日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  観覧車うっとり回るこの街の
  ひかりの蛇口をゆるめるように

          大阪市 toron*


    【評】あの大きな光の輪は、実は街の光の蛇口に付いた
       蛇口ハンドルなのだという見立て。
       スケールが大きくて想像力を刺激される。
       「うっとり」が甘い恋の要素を感じさせ、
       光とともに幸せが広がるイメージが素敵(すてき)。


歌を読み、評を読む。
もう一度歌を読む。
蛇口がゆるむのだから、
作者は左回りに動く観覧車を観察してるのかな。
光の景色が浮かんでくるようだ。


  わたしはきっと言葉を受けきれないうつわ 
  広告募集のまっさらさ立つ

          川崎市 からすまぁ


    【評】看板でありながら広告の描かれていない状態。
       人でありながら言葉を受けとめきれない自分。
       上下の句が対をなして胸に迫る。


歌を読む。
最初はピンとこなかった。
評を読む。
もう一度歌を読む。
作者に伝えたい気持ちがあれば
句のカタチにこだわらなくてもいいんだなぁと気づく。


  やはらかき繭のオーラの脳外科医 
  診断つげる糸つむぐよに

         東京都 駒形光子


手術結果を聞く緊張感。
脳に関わることならなおさらだろう。
繭のオーラを持つ先生の、糸をつむぐような言葉なら
少しは安心して耳を傾けられそうだ。