伊藤賀一評:伊藤智章『ランキングマップ世界地理ーー統計を地図にしてみよう』(ちくまプリマー新書、2023)

クリッピングから
筑摩書房PR誌「ちくま」2023年10月号(No. 631)
伊藤賀一評:伊藤智章『ランキングマップ世界地理ーー統計を地図にしてみよう』
ちくまプリマー新書


(表紙絵 ヒグチユウコ/表紙・本文デザイン 名久井直子



  高校の地理教員による、地図とデータを駆使した、
  若者向けのプリマー新書としては骨太の著書である。
  (略)


  本書の軸は、ランキング制の旧データと新データの比較による推移で、
  上位と下位の入れ替わりの激しさを見て楽しむ部分になる。
  そして太ゴシック体などで知識を強調しない、
  無理に「読みやすい」状態にせず、
  読者にフラットな状態で「考えてもらおう」という意図を
  強く感じさせる作りである。


  さてその意図に乗り読み進めてみた結果、
  途中から評者はある種の恐怖を感じた。
  日本の現状についてである。
  (略)


  そもそもランキングに、日本はほとんど登場しない。
  本書が優れているのは、
  日本と諸外国との「スケールの違い」を表出させているところだ。
  淡々と書かれているからこそ、驚きの連続である。
  全てに地図・データが添付されているので説得力抜群。
  ぐうの音も出ない気持ちでページをめくる。
  (略)


  なるほど、本書は日本の現状を客観的に認識させ、
  今あるカードでどのように勝負していくかを考えさせるものなのだな、
  と腹落ちした。
  だからこそ高校教員、「教育者」なのだ。
  予備校講師の私は、優先事項が合格させることにすぎず、「受験屋」なのだ。


  本書は評者の初の書評である。
  日本の現状にも自身の現状にも気づかされた。
  初めてが本書でよかった、と納得している。

                      (いとう・がいち 社会科講師)

                               (pp.18-19)



(伊藤賀一先生はオンライン学習プラットフォーム「スタディサプリ」社会科の超人気講師。
 僕は先生の「高校日本史」「高校歴史総合」を受講している)