エマニュエル・トッド/石崎晴己訳『帝国以後ーーアメリカ・システムの崩壊』(藤原書店、2003)

エマニュエル・トッド/石崎晴己訳
『帝国以後ーーアメリカ・システムの崩壊』(藤原書店、2003)を読む。
2002年の原著、いま読んでも得るものが多かった。



目次は以下の通り。


  日本の読者へ(2003.3.26)

  開幕

  第1章 全世界的テロリズムの神話

  第2章 民主主義の大いなる脅威

  第3章 帝国の規模

  第4章 貢納物の頼りなさ

  第5章 普遍主義の後退

  第6章 強者に立ち向かうか、弱者を攻めるか

  第7章 ロシアの回復

  第8章 ヨーロッパの独立

  ゲームの終り

  原注

  図表一覧

  訳者解題


訳者解題から引用する。


  ソ連邦崩壊以来、唯一の超大国となったアメリカ合衆国
  古代ローマ帝国にも匹敵する(しかも地球全体への支配権という点では
  人類史上未曾有の)帝国をなしているという認識は、
  このところ急速に広まっている。
  これについて論じる著作はいずれも、
  アメリカ帝国の強大さを前提としており、
  その世界支配を道徳的立場から告発する論も少なくない。


  アメリカ帝国論としての本書の基本的性格は、
  そうした言わば反体制的ないし異議申し立て的著作とは、
  根本的なスタンスを異にするという点であろう。
  科学者であるトッドにとって、道徳的告発は無縁な立場である。


  第二の特徴は、アメリカ帝国の強大さではなく、
  その脆弱さを分析・研究し、その崩壊を予告している点である。
  これこそ本書の真骨頂であるが、
  いままで何者がこのような挙をなし得たであろうか。
  アメリカ帝国の衰退という、この何びとも抱き得なかった観念によって、
  本書はフランス中に(おそらくヨーロッパ中に)衝撃を与えた。
  まさに「予言者」の面目躍如というべきであろう。

                           (pp.291-292)


著者と交流が深く、多くの著書を日本語に訳してきた石崎氏は
2023年10月22日逝去された(享年83)。
ご冥福をお祈りします。


(訳者による本書はトッド哲学の全体像を理解する最良の手引きになった)