エマニュエル・トッド/堀茂樹訳『我々はどこから来て、今どこにいるのか?(下)ーー民主主義の野蛮な起源』(文藝春秋、2022)

エマニュエル・トッド堀茂樹
『我々はどこから来て、今どこにいるのか?(下)
 ーー民主主義の野蛮な起源』(文藝春秋、2022)を読む。



下巻の目次は以下の通り。


  第11章 民主制はつねに原始的である
  第12章 高等教育に浸食される民主制
  第13章 「黒人/白人」の危機
  第14章 意志と表象としてのドナルド・トランプ
  第15章 場所の記憶
  第16章 直系家族型社会ーードイツと日本
  第17章 ヨーロッパの変貌
  第18章 共同体家族型社会ーーロシアと中国
  献辞
  追伸ーーリベラル・デモクラシーの将来
  原注
  日本語版へのあとがき


    本書は、
    Emmanuel Todd, Où en sommes-nous?:
    Une esquisse de l'histoire humaine, Editions du Seuil, 2017
    の全訳である。


第16章を読むと、日本社会が頑なに変化を拒む面について
「直系型家族社会」の補助線で理解が深まる。
一例を挙げれば、なぜ自民党同性婚を認めないのか、
拘置所、入国者施設での収容者への非人道的扱いなど、
意識、下意識、無意識の三層を自分なりに分析していけば
問題の構造、本質が明解になってくる。
「知の巨人」としてトッドをいたずらに奉り、消費するのでなく、
人類が新たに手に入れた思考ツールとして使いこなしていけばいいと思う。


本格的な学術書だけに
たとえ原書にはなかったとしても索引が欲しかった。
時間的・経済的制約が出版社、訳者にあったのか。
以後の参照には、目次に付けられた詳細な小見出し
索引代わりに使うことにしよう。



(本書を読み解くのに役立つ参考書2冊。併読するとトッド学の理解が深まる)