クリッピングから
讀賣新聞2024年2月12日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。
一枚の葉もなきいちやうの並木道
遠近感が夏とは違ふ
匝瑳市 椎名昭雄
【評】葉が繁っていれば、
光や風が伝えてくる情報も多い。
遠近感という語が効いて、
夏と冬の二枚の風景画を並べたような読後感だ。
ポケットの丸めた手袋出すように
そんな約束したっけと言う
高島市 宮園佳代美
それは罅(ひび)ではなくて
貫入とふたりの日々にかける釉薬
横浜市 紺屋小町
鍵盤でトランポリンをするように
下りては上がる八才の指
船橋市 田中澄子
今週のもう1首。
かたまったビニール傘を
ばりばりと開く玄関うす暗き午後
仙台市 岩間啓二