保育園児は木の芽草の芽(諸井末男)

クリッピングから
讀賣新聞2024年3月25日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  残雪に明るむ庭に遊びゐる
  保育園児は木の芽草の芽

       青梅市 諸井末男


    【評】まもなくの春。
      はつらつと遊ぶ園児たちの様子が目に浮かぶ。
      季節に合った結句のリズムが弾むようで、
      また豊かな未来を感じさせて、園児の比喩にぴったりだ。


  この年は僕の観測史上初
  あなたの居ない春になったよ

      吹田市 崎島スジオ


    【評】ニュースなどで耳にする「観測史上初」という文言を、
      自分ごとに用いたところがユニーク。
      大げさでふざけているようにも見える表現は、
      虚無感の裏返しだろう。


  野に生くるものの用心ツグミらの
  せつな啄みせつな見回す

        市原市 井原茂明


    【評】小鳥の忙(せわ)しない動きは、生きるため。
      下の句のリズムが、その忙しなさとうまく響きあっている。


今週のもう1首。


  バンザイで一、二、一、二と歩く子を
  ゴールテープのよに受けとめる

            船橋市 矢島佳奈



(作家・書評家スケザネさんと組んだ選集)


俵万智特集を組んだ月刊誌「短歌研究」2冊)