自分のふがいなさに涙したことも何十回ではききません(米山明日香)

NHKの国際ニュースを材料に現代英語を学ぶラジオ番組
「ニュースで学ぶ<現代英語>」。
2年間担当してきた米山明日香先生、
ナビゲーターの秀島文香さんが交替になります。


最終週3回の「学習ポイント」コーナーは
明日香先生からのラストメッセージ
「英語の使い方はもっと自由であって良い!」。
第2回、第3回の内容を番組サイトから引用します。


  今週は私が担当する最終週ということで、
  「英語の使い方はもっと自由であって良い!」をテーマにお送りしています。
  第2回は「私たちの英語は『世界の英語』」です。


  この番組では、これまでNHKの国際放送で放送されたニュースを使用し、
  さまざまな英語を聞いてきましたね。
  今回のニュースでも、国連の軍縮部門トップを務める
  中満事務次長の英語が取り上げられています。


  “It is up to you, the States,
  to take a preemptive and preventative approach,
  to shield present and future generations from the consequences of
  the use of autonomous weapons systems.”


  非常に聞き取りやすい、クセがない英語ではないでしょうか?
  国連という世界の舞台で活躍している方の英語はとても聞き取りやすく、
  まさにWorld Englishesの模範のような英語ですね。


  英語は今や、アメリカの言語でも、イギリスの言語でもありません。
  世界の“共通言語”です。


  そもそもWorld Englishesというのは、
  1985年にインドの言語学者カチル博士が提唱した
  「英語を話す人の内訳を表す概念」のことです。
  カチル博士はこの概念を、
  中心が同じで大きさが異なる3つの円を使って表現しました。


  まず、inner circle「内側の円」は、
  「英語を第1言語とする人」と定義しました。
  その数はおよそ4億人弱と言われます。


  次に、その周りを囲むouter circle「外側の円」は、
  インドやフィリピンなど歴史的な経緯から
  「英語を第2言語としている人々」のこととしました。
  この数がおよそ1億5,000人から3億人と言われます。


  そして、一番外側の円であるexpanding circle「拡大する円」は、
  私たちのように「外国語として英語を使う人々」のことです。
  その数は、数億から10億人ほどと言われ、
  現在もその数は増え続けています。


  ということは、世界の英語の話し手の6~8割が、
  英語以外を母語とする「非英語母語話者」とも言えます。
  つまり、今後、私たちが仕事などで出会う多くの外国人は
  「非英語母語話者」になるというわけです。


  このように世界を見渡せば、
  英語をWorld Englishesとして使うケースが増えています。
  外国語として英語を話す私たちは、
  中満氏のように、臆することなく堂々と英語を話せばよいわけです。


  大切なのはintelligibility「明瞭さ、通じやすさ」です。
  それがあれば、英語の使い方はもっと自由であって良いんです。
  間違えても気にしない!


  中満国連事務次長のように、
  はっきりと、短いスパンで区切って話すのもintelligibilityの1つです。


  It is up to you, / the States, / to take a preemptive and preventative approach, /
  のように短く区切ると、とても分かりやすいですね。


  いかがでしたか?
  皆さんもぜひ自信をもって、英語をもっと自由に話してみてください。


★★★


  最終回は、「さあ、英語で話そう!」です。


  今回のニュースの概要を、リード文で確認してみましょう。


  A Japanese woman who spoke up against sexual harassment
  has been honored for her bravery.


  このニュースは、五ノ井さんが性被害を
  spoke up「訴えた、声を上げた」ことが世界的に評価され、
  アメリ国務省が五ノ井さんに
  「世界の勇気ある女性賞」を授与したという話題です。
  そして、その授賞式でのジル・バイデン大統領夫人の言葉がこちらです。


  “You've spoken out for yourselves and for others in the face of fear and risk,
  and those who have tried to steal your voices away.”


  五ノ井さんは、
  「恐怖と危険に対じしながらも自分自身や他の人々のために
  have spoken out『声を上げた』」と評価されました。


  外国語を学習するときにも、
  speak up「大きな声ではっきり話す」ことや、
  speak out「思い切って言う」ことは、とても重要です。
  時にはネガティブな反応をされることもあるかもしれませんが、
  臆することなく、英語を堂々とspeak up、speak outすることが何より大切です。


  「英語の使い方はもっと自由であって良い」のです。
  なぜなら、私たちの英語はWorld Englishesの1つなのですから。
  ですから、間違えても大丈夫。
  それよりも、相手の言っていることに耳を傾けたり、
  堂々と自分の考えを相手に伝えたりしましょう!


  私も以前は、自分の言いたいことが言えずに
  もどかしい思いをたくさんしました。
  そして、自分のふがいなさに涙したことも何十回ではききません。
  でも、それにめげず、speak upして、speak outして、
  今日までどうにかやってきました。
  ですから、もし皆さんが今、大変な思いをして、
  それぞれの目標に向かって英語を勉強されているなら、
  どうか諦めないでください。


  outputとして英語が口をついて出てくるようになるためには、
  まず多くのinputが必要ですので、たくさん英語を聞いてくださいね。
  これまで、Listening PointとToday's Takeawayで、
  皆さんにたくさんの表現やポイントを紹介してきました。
  どうかそれらを心にとめておいてください。


  最後に、皆さんに
  南アフリカネルソン・マンデラ元大統領の言葉を紹介して終わりたいと思います。


  “If you talk to a man in a language he understands, that goes to his head.
  If you talk to him in his own language, that goes to his heart.”


  「相手が理解できる言葉で話せば、それは相手の頭に届く。
  相手の言葉で話しかければ、それは相手の心に届く」です。