かれこれ3時間の旅


仕事を早めに切り上げた日、
あなたならどうします?


僕は普段は乗らない電車に乗って
普段は降りない駅で降り、
ネットで見つけておいた銭湯を目当てに
プラプラ街を歩く。


感覚が少し開放されているのか、
街ゆく人たちの表情もよく見えるし、
見落としそうな店が眼に飛び込んでくる。



知らない街の銭湯で
見知らぬ人と湯につかる。
たいがいなにも考えていない。
昼間の仕事のことも忘れている。
無念無想の境地などは決して訪れないが、
風呂を愛する人間は湯と戯れ瞑想する。



湯上がりには
そぞろ歩きで気になっていた店の一軒に飛び込む。
たたずまいのいい店、
働く人たちがキビキビしている店は清潔で、
たいがい味もいい。値段も納得がいく。
それほど立地がよくなくても
ちゃんと客が次々と入ってくる。




そうこうして再び電車に乗り家路につく。
かれこれ3時間の旅が終わる。
飛行機に乗って外国に行かなくても、旅はできる。