自分が生きてきた時代の歴史というのは
案外、灯台下暗しである。
中学校、高校の日本史でもたいがい現代史のところは
ほとんど時間が足りなくなって、はしょられることが多い。
同時代の価値を定義することは、なかなか難しい。
- 作者: 荒川章二
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/03/26
- メディア: ハードカバー
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小学館の「全集 日本の歴史 全16巻」は
小学館創立85周年記念出版。
新視点で日本の歴史をとらえた企画であると聞いていた。
原研哉アートディレクションの
どらえもんの表紙(さすがは小学館!)に誘われて
最終の第16巻「1955年から現在 豊かさへの渇望」(荒川章二)を
読んだ。
目次は以下の通りである。
第一章 「戦後社会」をめぐる対抗 ー1955年〜
第二章 戦後大衆社会の成立 −1960年代〜
第三章 豊かさの成熟とゆらぎ −1975年〜
第四章 「戦後」からの転換 ー1995年頃〜
歴史を勉強していていつも知るのは、
普段は日々の暮らしの中に僕たちの意識があるが、
俯瞰的、時系列的に社会を眺めると
そこには抗い難い力が働いていることだ。
大河の激流の中で、個人の存在、役割とはなんだろう。
一方で歴史書に書かれない市井の人々、
つまり大多数の僕たちの暮らしは厳然といま、ここにある。
その尊さを踏みにじられてなるものか、の思いは日ごと強くなる。
個人、家族、組織、社会、国家。
物事はいくつかのレンズで複合的に観察し、
同時に自ら思考し、判断し、行動することが大切なのだろう。
この本がキーワードにした「豊かさ」が戦後どう変化してきたか。
国家の求めた「豊かさ」と、
僕たちひとりひとりが求めた「豊かさ」は、
どこで一致し、どこで相反してきたのか。
そのことを考えてみる。
ゴールデンウィークは、
日頃虫の目で観ることが多い日々を
鳥の目で観直す絶好の時間であるように思う。
この本は、戦後から現代までの時間と、
そこに拮抗していた力の存在を
鳥の目で観察するのに役立つ本である。
世田谷美術館で開催中の写真展
「日本の自画像 写真が描く戦後 1945-1964」をこの本と合わせて
ご覧になってはどうだろう。
自分たちの暮らしと国家の輪郭が見えてくる気が僕はした。