小西甚一『発生から現代まで 俳句の世界』(1952/1994復刊)


小西甚一『発生から現代まで 俳句の世界』
(1952刊/1994復刊)を読む。表4解説にこう書いてある。


 「俳句鑑賞に新機軸を拓き、
  俳句史はこの一冊で十分と絶賛された不朽の書。」


俳句の世界 (講談社学術文庫)

俳句の世界 (講談社学術文庫)


看板に偽りなしであった。
そもそも小西先生の『古文研究法』に高校生のときに出会った。
つい先日、『古文の読解』が復刊したのを坪内祐三のコラムで知り、
その機会に先生の著作を何冊か買い求めた。
『俳句の世界』はそのうちの一冊である。


古文の読解 (ちくま学芸文庫)

古文の読解 (ちくま学芸文庫)


  (今年2月に待望の復刊。早くも3刷。売れている)


連歌俳諧、俳句の違い。
雅と俗のキーワードで大胆に日本文藝史を読み解く小西理論。
連歌師から現代の俳人までの歴史を
文庫400頁に書ききった視野の広さ、知的体力。
面白い面白いと読み進めてしまった。


古文研究法

古文研究法


凡庸な俳句の本とは異なり、
著者が天才と認める芭蕉、蕪村、誓子らの句についても
傑作だけでなく低迷期の作品まで批評し尽くす鋭さがある。
著者自身も実作に励み、
そうでなければ俳句の心は分からないと
理論と行動でこの芸術の奥義に肉薄していく。


もともとは昭和22年の大学での講義ノートに基づく著書。
名講義を半世紀以上過ぎて味わえるのが至福である。


(文中一部敬称略)