幻の古語辞典に出会った日


幻の著書が我が家にやってきた。
連休第2日、はるばる20kmを自転車で出かけた都立多摩図書館から
近隣の図書館に届いたのだ。
小西甚一『学習基本古語辞典』(大修館書店;1984)である。
なぁんだ、さんざん探していたのは辞典だったのか、
と言わないでいただきたい。
幻の名著なのである。



「はじめに」にこうある。


  この辞典は、わたくし自身が書いたものであり、
  解釈も、用例も、他の辞典から借用したのは、ひとつも無い。


堂々とこう宣言できる辞典がいったいいくつあるだろうか。



この辞典の基本は、
「グレイド別の基本古語」という考えかたで成り立っている。


  この矛盾した要求(=多種多様の学科に精力を分散しなくては
  ならない高校生諸君が古文にばかり時間をかけることは、
  とうてい不可能なのが現状である。
  しかし、古文を的確に理解するため、
  古語の必要にして十分な知識をもつことは、
  ぜったい欠かせない。)を両方とも満足させるため、
  わたくしは、グレイド別の基本古語という
  考えかたをうち建てた。
  

  その選定は、推計学を利用したもので、
  現在のようにコンピューターが普及していない時期だったから、
  作業は困難をきわめたけれど、結果は、いま見ても十分に
  満足できるものとなった。まことに幸いだったと感じている。



Aグレイド311語、B グレイド618語、Cグレイド947語、
Dグレイド2514語、Eグレイド1851語、
総計6241語が選定されている。
本文585ページ、巻末付録80ページ、計665ページ。
通読してみたくなる辞典である。


昭和59年4月1日発行。
定価1100円。
もともとは目黒区立洗足図書館蔵書。
貸出カードを見る限り、これまで借りた人はいなかったようだ。
奥付に「本書使用の語彙グレイドの無断使用を禁ずる。」とある。
小西の矜持を見る。


(文中敬称略)


wikipedia:小西甚一