「串カツ田中」の赤提灯


この日は飛び込みの打ち合わせがふたつあり、
アシスタントNさんとあらかじめ組んでおいた予定をやりくりして
なんとか一週間分の仕事を終えた。
21時を回っている。
ランチもミーティングの切れ目に5分で済ませたから
なんだか物足りない。



東急世田谷線に乗り継ぎ、世田谷駅で降りる。
夜風が冷たい。
三分ほど歩くと、ホッとする赤提灯が見えてくる。
串カツ田中」だ。
訳あって揚げ物は控えている身だが、
根が好きだからときどきどうにも食べたくなる。
そんなときは量を控えめにして食べることにする。
ボクサーあがりのような風情の店長と
体育会的なノリがあって「田中」は面白い。
もとは大阪の串カツ屋である。



関西出汁の湯豆腐(ネギとおぼろ昆布)と
チーズうす揚げ(関東で言う油揚げ)、サービスの生キャベツで
コップの燗酒を二杯飲む。
それから元祖トリハイ(濃いめ)で串揚げを数本いただいたところで
同居人から連絡がある。
ほどよく腹の虫もおさまったから、
家に帰って今度は同居人の夜食を作ることにしよう。
我が家では人を呼ぶときの料理は同居人、
日頃のふたり分のまかないご飯は僕の担当になっている。


世田谷駅で電車を待っていると、
酒で温まった身体が再び冷えてくる。
冬たけなわの一日。