内田樹『増補版・街場の中国論』を読む。
丁国旗教授をゲストに招いた大学院でのゼミが
ベースになっている。
前著『街場のメディア論』と同じくらい面白かった。
国家としての中国が
どうして僕たちの想像範囲を越えて決断し行動するのか。
その原理を内田は推理していく。
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: ミシマ社
- 発売日: 2011/02/25
- メディア: 単行本
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中華思想とは中心と周縁である。
中心の光は周縁に近づくにつれて弱まり、
したがって境界線がぼける。
だから、中国には明快な国境線という概念がない。
これが一番興味を引かれた洞察である。
台湾で起きたこと、尖閣諸島で起きたことなどは
この中華思想から推理していくと読み解くことができる。
正解かどうかはもちろん自分なりの検算が必要だが。
一億三千万人の国民の統治と
十三億人の国民の統治はまるで違う。
その統治にはシンプルな物語が必要となる。
こうした洞察から中国で断続的に起きる反日活動を
内田は読み解いていく。
内田の著書を読みながら中国について考えていると
日本で見聞きする凡百の中国論が
吹けば飛ぶよな薄っぺらい通念に思えてくる。
思考の材料を提供してくれる内田のような学者の存在は
僕たちにとって貴重であると本書を読んであらためて実感した。
(文中敬称略)