クリッピングから
讀賣新聞2019年10月4日夕刊
にほんご コトバを生きる
翻訳がつなぐ 世界文学
東京大学教授 文芸評論家 沼野充義(ぬまの・みつよし)さん
(略)
「外国語を学ぶのはエネルギーが要ります。
でも、そのエネルギーのおかげでクリエイティブな力が増す。
日本文学を日本語だけで読んでいると、エネルギーが発生せず、
自己閉鎖的になりかねない。
だからこそ作家も読者も、日本語の外へ出て行く必要があるんです」
—沼野教授の批評は、日本の小説を
世界文学の流れに位置づける観点で知られます。
「J文学という呼び方も90年代にありましたが、
私はW文学をめざせ、と言ってきた。
本場で活躍する日本人アスリートが増えているように、
優れた日本語小説は十分海外で通用する。
各国の日本語訳者も水準が上がっている。
その機運のさなか、7年前の事業仕分けで
文化庁のJLPP(現代日本文学の翻訳・普及事業)が廃止になったのは、
返す返すも残念です」
(略)
—英文、仏文、独文……縦割りの壁を越える場をめざし、
東大文学部に「現代文芸論専修」ができて12年です。
「現代文芸論で力を入れたのは、批評理論と翻訳研究です。
最初はアメリカ文学の柴田元幸君と私。
翌年、ラテンアメリカ文学の野谷文昭さんが加わり、
大橋洋一さんにも最先端の批評理論を大いに講じてもらった。
ブルガリア、ベネズエラ、中国……日本語の堪能な留学生も集まり、
ここで学位を得ています」
(略)
(聞き手:編集委員/尾崎真理子)
2020年 「徹夜の塊」完結編『世界文学論』を作品社から刊行予定
(「沼野充義さん略歴」より)
僕の沼野先生との出会いは、
NHKラジオ英語講座「英語で読む村上春樹」でした。
世界文学として村上作品を英語で読み解く講義で
毎回聞き逃せない内容でした。
以来、先生が翻訳したロシアのナボコフ作品を
読んだりしています。
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