ジェイ・ルービン『村上春樹と私』(2016)


2013年4月開講のNHKラジオ英語講座
「英語で読む村上春樹」を聴き始めて
この人の書いた英文に触れることになった。
言葉の音楽を感じるその訳文は
村上の日本語原文に確かに通底していた。
ジェイ・ルービン『村上春樹と私
—日本の文学と文化に心を奪われた理由』(2016)を読む。



村上との出会い、そこからの人生の展開、現在の活動までが
淡々と、けれど色濃く綴られている。
二人の、仕事を通じた信頼関係が
読んでいて静かに伝わってくる。
本書は日本人の翻訳でなく、
ジェイ自身が日本語で書いているのだから恐れ入る。


ジェイが訳し、村上が序文を書いた
ペンギン・クラシックス
"Rashomon and Seventeen Other Stories"
芥川龍之介『「羅生門」と17の物語』)も読んでみたくなった。



ジェイはハーバード大学名誉教授。
米国で日本文学の教授を務める人なら
誰でも翻訳をしているのだろうと思って始めてみた。
実際のところ、他の人たちはそんなことはなかった。
でも、そのとき翻訳の面白さに
すっかりはまっている自分に気づくのだった。



竹内雄二の青を基調とした装丁が
本の中身と合っていてとても感じがいい。
アイランドコレクションのDTPは文字組が美しく、
本文だけでなく、注釈まで読みやすい。
編集担当は東洋経済新聞社・中村実。
また一冊、いい本に出会えた。


村上春樹と私

村上春樹と私

Rashomon and Seventeen Other Stories (Penguin Classics)

Rashomon and Seventeen Other Stories (Penguin Classics)

wikipedia:en:Jay Rubin


(文中敬称略)