2013年から17年にかけて
NHKラジオで放送された英語学習番組「英語で読む村上春樹」。
初年度後期(2013〜14年)に沼野充義講師が取り上げた作品が
「かえるくん、東京を救う」だった(英訳:Jay Rubin)。
この作品を含む6作の短編集『神の子どもたちはみな踊る』
(2000/新潮文庫2002)を読む。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/02/28
- メディア: 文庫
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1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から5年後に発表され、
6編に登場する人物はいずれもどこかでこの地震に関係している。
読後の空白感がなんとも言えない余韻を残す連作だ。
例えば冒頭に収められた「UFOが釧路に降りる」はこんな風に終わる。
小村は気持ちを静め、部屋を見まわし、
それからもう一度枕(まくら)に頭を埋めた。
目を閉じ、深く息をついた。
ベッドの広さが夜の海のように彼のまわりにあった。
凍(い)てついた風の音が聞こえた。
心臓の激しい鼓動が骨を揺さぶっていた。
「ねえ、どう、遠くまで来たって実感が少しはわいてきた?」
「ずいぶん遠くに来たような気がする」と小村は正直に言った。
シマオさんは小村の胸の上に、
何かのまじないのように、指先で複雑なもようを描いた。
「でも、まだ始まったばかりなのよ」と彼女は言った。
最後の一行がなんだか怖い。
小村とシマオさんはきょう釧路空港で知り合ったばかりで、
その夜、当たり前のようにベッドを共にする。
なにが始まったばかりなんだろうと想像すると、
あまり楽しそうでない近未来が浮かんでくるのだ。
(僕が持っている文庫はJohn Gallカバーデザインのバージョン)
- 作者: 村上春樹,沼野充義,NHK出版,侘美真理
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2014/07/16
- メディア: ペーパーバック
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