ナボコフ『賜物』(沼野充義訳、雑誌初出1937-38)


ロシアの小説が読みたくなって借りてきた。
ウラジミール・ナボコフ『賜物(たまもの)』を読む。



この本を選んだのは翻訳が沼野充義で、
「世界文学全集」を個人編集した池澤夏樹と対談していたからだ。
沼野は2013年に開講したNHKラジオ英語講座
「英語で読む村上春樹」の初代講師。
僕は欠かさず聴いていた。
池澤編集の全集で沼野がロシア語から初めて日本語に訳出。


村上春樹「象の消滅」英訳完全読解

村上春樹「象の消滅」英訳完全読解

  (沼野の解説で村上春樹を解読する一冊)


沼野は「解説」でこう書いている。


   語学的な好奇心から、
   その他(引用者注:ロシア語版、英語版以外に、の意味)、
   ドイツ語訳、フランス語訳、ポーランド語訳なども手元に置いて
   随時参照した。
   (p.603「解説」より引用)


「世界文学」に取り組む日本の第一人者で
マルチ・リンギストである。


村上春樹「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解

村上春樹「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解


『賜物』はロシア文学らしく重層的な構造を持った作品である。
主人公の若き作家、
フョードル・コンスタンチノヴィチ・ゴドゥノフ=チェルディンツェフは
ロシア革命を避け、ベルリンに亡命中。
そこで処女詩集を出版したシーンから始まる。
全部で5章で構成されるが、4章を読んでいる最中に迷子になった。
それもそのはずで、4章はまるごと小説中小説で、
フョードルが書いた作品。
そのことの注釈は一言もない。
政治的な事情で初出掲載時には削除された章だ。


ラストで恋人ジーナと
二人で暮らすことになるアパートメントに帰るシーンを読んでいて
ふと始めからもう一度読みたくなる。
なんのことはない、「解説」を読んでいたら
沼野がそう書いていた。


沼野の細に入り微に入った注釈が付けられた580頁。
初読では注釈をいちいち読むのが煩わしくて飛ばしたが、
再読ではじっくり読みたくなった。
図書館で借りて読了するのに5週間弱かかった。
ロシア文学は読者にも知的体力を要求する。
再読はまたいずれ。


wikipedia:en:vladimir nabokov
wikipedia:ウラジーミル・ナボコフ




今夜の同居人用夜食大王弁当。
胡麻ごはん。ベーコンオムレツ。グリーンアスパラおかか和え。
イカ天。セロリきんぴら。じゃこと大根菜。
たんかん(デザート)。


(文中敬称略)