有馬哲夫『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』(2013)


有馬哲夫『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』を読む。
アメリカの公文書を史料としてふんだんに使い、
これまでの類書とは異なるアプローチを取っている。
それなのに児玉の自伝『悪政・銃声・乱世』(1974) に比べると
読後感が物足らないのはなぜだろう。


児玉誉士夫 巨魁の昭和史 (文春新書)

児玉誉士夫 巨魁の昭和史 (文春新書)


無論、自伝と第三者が書いた歴史書は違う。
本人が書けなかったこと、あいまいにぼかして書いたことも
史料や証言で再検証できるのが後者の意義だろう。
知れば知るほど昭和史の怪物であることが分かる児玉に
本書がいま一歩迫れないのはどうしてか。
児玉を生涯に渡って突き動かし続けてきた動機、志が
そこにはあったに違いないのだ。
その解明が不充分であるように思う。



歴史の闇に葬り去られかけている児玉誉士夫
現代に生きる僕たちに思い出させる労作である点は大いに買う。
文春新書書き下ろし。380頁。



(文中敬称略)