小西甚一『古文研究法』(1965)


走った経験はないが、
フルマラソンを完走したら、こういう気持ちになるのか。
小西甚一『古文研究法』を読み終える。
初めてこの本に出会い購入したのは高校生のときだから、
40年かけてようやく一冊の本を読み終えたことになる。


古文研究法

古文研究法


伊藤和夫『英文解釈教室・改訂版』を
2013年に二度通読できたことが自信になったと思う。
そのときも骨は折れたが収穫も大きく、
だから『古文研究法』を完読できたのだろう。


この二冊には意外なほど共通点が多い。
受験参考書のジャンルに位置づけられながら著者の志が高く、
読者に本格的な読解力をつけさせることを唯一のゴールとする。
例題をほぼ自分で作り、例文を自分で収集している。
実はこうした職人仕事の集積は類書が真似できないことだ。
他人が作った大学入試問題を切り貼りする方が楽に決まっている。


英文解釈教室 改訂版

英文解釈教室 改訂版


読み終えてどんないいことがあったか。
古文を読むのが億劫でなくなってきた。
他の外国語を学ぶときと同様に
語彙、文の構造、精神や歴史背景を知ることで
着実に読解力が向上した。
日本が誇る1,300年分の古典にアクセスする力が
ついてきたことがなによりうれしい。



海外の人たちと話していても、
自国の古典すら読む能力がこちらになくては話にならない。
まさに小西先生が本書「あとがき」でおっしゃる通りだ。
500頁近い、高密度の本を読み通すのは
決して楽ではなかったが、再読に挑戦したい。
再読は一度目ほどの困難がなく、かつ収穫が多い。
僕は伊藤先生の言葉を実践し、実感しているのだ。