松本光弘『グローバル・ジハード』(2008)


本書は2008年に出版された。
イスラーム国を中心に起きている世界的出来事を理解するのに
中身は少しも古びていなかった。
松本光弘『グローバル・ジハード』を読む。
日本の警察庁にもこんな人材がいたのか。


グローバル・ジハード

グローバル・ジハード


著者は執筆当時、警察庁公安課長。
2001年の9.11に至るまで、そして9.11以降に
イスラムスンニ派などテロリストが
どんな思考でどんな行動を取ったかが手に取るように理解できる。
彼らに敵国と定義された日本にテロの実害を及ばさないために
松本は本書で世界像の更新と敵方の把握を試みる。



もともと警察同僚に読ませるため
松本が『警察学論集』に書いた論文が本書の元だ。
立花書房・伊藤健生、講談社・唐沢暁久、
著者の友人・今村哲夫らの尽力で出版が可能になった。
惜しむらくはいま日本の読者に必要な本が
埋もれて広く読まれていない懸念があることだ。
講談社による文庫化を強く望む。



本書は佐藤優メルマガ『インテリジェンスの教室』
(月2回発行:1,080円)、佐藤の「読書ノート」で存在を知った。
調べると蔵書として持つ図書館も結構ある。
世界のイスラム的理解、
世界における日本の位置を再確認するために
一読をお薦めしたい。



(文中敬称略)