松本亨『英語の新しい学び方』(1965)


英語学の齋藤秀三郎、
ドイツ語学の関口存男の著書・伝記を読んでいるうちに、
僕の英語の師のひとり、松本亨先生
久々活を入れてもらいたくなった。
松本亨『英語の新しい学び方』(1965)を読む。


英語の新しい学び方 (講談社現代新書 (52))

英語の新しい学び方 (講談社現代新書 (52))


松本先生のほとんどの著書を持っているが、
この新書は内容の一部に記憶があったものの、蔵書の棚にはなかった。
買ったことはなかったんだな。
Amazonで1円(送料257円)で見つけた。


梅田紀伊國屋書店で買ったときのレシート
(1988年8月4日付)がはさまったままの新本同様の状態だった。
前の持ち主は未読のまま、どこかに売ってしまったのかもしれない。
51年前の先生の著作が、増刷を新刊で買ったどなたかの手を経て
28年後に僕のところにやってくることになった訳ですね。


NHKラジオ講座「英語会話」講師時代、
先生の低音で発せられる英語、
先生の書くスキットの面白さに僕は魅せられた。
中学から高校にかけてのことだった。



この本の最後で先生は読者の年齢に応じて
英語を学ぶアドバイスをしている。
「もしあなたが社会人なら」の項目から引用してみる。


  1日にすくなくとも、まとめて3時間は英語を読んでください。
  これはいい文章だ、
  これは役に立ついいまわしだと思うところは、
  下線をひいていきます。
  (中略)
  つぎに書くことです。
  書くことを怠っては、とうてい英語の力はつきません。
  このほうは、1日に1時間でけっこうです。
  (中略)
  聞くことも怠るわけにはいきません。
  英語放送は1時間ぐらいかけっぱなしにして聞いてください。


このへんでおおかたの社会人読者は挫折を予感する。
だって毎日5時間ですからね。
NHKラジオ講座での温厚な松本先生は、
この書で「英語の鬼」に変わる。
いや、話が逆だ。
「英語の鬼」松本先生が
NHK講座では、誰にでも英語に親しめるように
広く門を開いてくれていたことにリスナー/読者は気づくのだ。



  (先生の絶筆全三巻「松本亨作品集」の第1集・第3集)


僕は今回先生の助言のこの箇所をもう一度読みたくて、
ネットで調べ、本書を購入した。
1日5時間の修行は続けていない不肖の弟子ではありますが、
先生の講座を聴いていた中高生のときと比べて
本書に書いてある内容は違和感なくスッと入ってきました。
"Think in English"、「英語で考える」という先生の長年の主張も
その後の体験で実感できるようになりました。


松本亨と「英語で考える」: ラジオ英語会話と戦後民主主義

松本亨と「英語で考える」: ラジオ英語会話と戦後民主主義


英語を教える達人の先生とは違う角度で生涯を取り上げた
ある博士論文が2015年に本になっていたことを知りました。
さっそく図書館で借りてきたところです。
先生の絶筆作品集(全三巻)の二冊も見つけたので
合わせて借りました。


(文中一部敬称略)