トカゲのしっぽ切りか、論功行賞か(池上彰)


毎月第4金曜日は朝日朝刊が楽しみです。
池上彰の新聞ななめ読み」が月一回掲載される日です。


7月一ヶ月間に起きたさまざまな事件で
ジャーナリスト池上さんが何を取り上げるのか。
朝日他各紙を比較読みして、どう分析するか。
新聞の読み方を勉強するにも絶好の紙上講座です。
今月はこの一本でした。



   加計問題の柳瀬氏退任
   「通常の人事」の裏側は


   役所が発表する人事異動を、
   記者はどう記事にするのか。
   記者の能力と新聞社の立ち位置が問われます。
   と書き出したのは、
   経済産業省の柳瀬唯夫・経済産業審議官の退任が
   決まったという記事を読んだからです。
   (略)


   経産相は「通常の人事」と言っているからです。
   記者はどんな工夫をしたのか。
   (略)


   (毎日新聞2面より引用=引用者注)
   <世耕氏は24日の記者会見で
   「世代交代を図らなければいけない面もあり、
   総合的に判断した」と述べた。……>


   世耕氏の発言が微妙で面白いですね。
   「面もあり」とか「総合的に判断した」とか。
   「面もあり」なら、ほかに何があるのか突っ込みたいですし、
   世代交代と言っているのに「総合的」とはどういう意味かとか。


   この記事の最後に
   自民党吉田博美参院幹事長のコメントが出ていますが、
   これが傑作です。
   「世耕氏が慎重に考えて決断した。それなりに評価したい」
   世代交代の人事異動などではないことを
   与党幹部が認めてしまっています。
   こういうコメントをきちんと原稿としてすくい上げることで
   人事異動の意味が見えてきます。
   (略)


   問題は、この後。
   柳瀬氏が今後どの道に進むのか。
   「トカゲのしっぽ切り」だと思ったら、
   論功行賞だったということもありえます。
   新聞記者たちは、今後の進路もチェックしてくださいね。



政府や自民党幹部だったらこの記事を読んで、
「池上は相変わらず食えない野郎だな。
そぅっとしといてほしいことをわざわざ朝日を使って
俎上に載せやがって」
と苦虫を噛みつぶすのでしょうかね。
もしそうなら、ジャーナリスト池上彰さんの真骨頂でしょう、
と一読者は思います。


あ、そもそも新聞を読むのは
自民党支持者ではなかったんでしたっけね。
内閣重鎮がそう言っていましたね。


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