グリーンランドを買収できないか(トランプ米大統領)

毎月最終金曜日は朝日朝刊が見逃せません。
月イチ連載「池上彰の新聞ななめ読み」が掲載される日です。
池上さんが一ヶ月間の新聞記事からどのニュースを取り上げるか、
朝日におもねることなく、主要全紙を比較して読者にどう提示するか。
記事を書いた記者にとっては業界の大先輩・池上さんの「公開通信簿」、
気が気じゃないと思いますけどね。


クリッピングから
朝日新聞2019年8月30日朝刊
池上彰の新聞ななめ読み」
グリーンランド買収構想 笑い話じゃない米の思惑


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  今月21日付の朝日新聞夕刊を見て驚きました。
  トランプ米大統領が、デンマーク自治グリーンランドを買収する構想を
  持っているというのです。


  その構想が明らかになると、
  デンマークのフレデリクセン首相は売却を否定。
  この反応に不快感を示したトランプ大統領
  首相との会談を延期したというのです。


  他国の領土を買収! 
  トランプ大統領の意外な言動には慣れてきましたが、
  それでのこの構想にはたまげました。
  (略)


  26日付朝刊1面の記事で疑問が氷解しました。
  驚くような構想は「北米に親中国家が誕生するかもしれないとの危機感だ」
  というのです。
  記事によれば、島の空港拡張工事の資金を
  中国が融資する動きが出たことで、
  デンマーク政府やアメリカが慌てているというのです。
  (略)


  この動きにアメリカが反発しました。
  島の北部には、アメリカを狙った大陸間弾道ミサイルを検知するレーダーがある
  米軍基地があるからです。


  アメリカは神経をとがらせ、デンマーク政府に対して
  「中国に進出させるな」と注意喚起。
  デンマーク政府は消極姿勢を一転させ、
  自治政府に低利融資を申し出たそうです。
  (略)


  なるほど。
  グリーンランドが中国の勢力圏になるという脅威を心配しているのですね。
  (略)
  これがトランプ大統領の「グリーンランド買収構想」につながったのですね。
  (略)


池上さんはトランプ米大統領グリーンランド買収構想について
他紙報道を過去に遡って調べます。
日経新聞が17日付夕刊で取り上げていたことを指摘します。


  なんだ、朝日はむしろ出遅れたのですね。
  でも、事態の背景についての現地取材で、
  他紙に追いつき、追い抜いたということでしょう。


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朝日掲載の記事最後にこの文章を書けるのが、
ジャーナリストとしての池上さんの凄味だと僕は思います。
他紙と比較読解される試練を経ることで
結局のところ、朝日はずいぶんトクをしていますね。
「池上さんの連載、中止しなくてよかったですね」
一読者としてエールを送ります。