読書事情から見えるその国の将来(池上彰)


スクラップブックから
朝日新聞2019年4月23日朝刊
トランプ氏の著書 イランで人気
敵視のはずが…「自国優先の姿 興味」


   トランプ米大統領と激しく対立するイランで、
   トランプ氏が執筆した書籍が人気だ。
   6千部印刷され、増刷された書籍もあり、
   書店主は「ビジネスマンとしてのトランプ氏に魅力を感じ、
   買う人が多い」と話す。
   政府レベルでは敵対しながらも、
   米国文化が好きなイラン人の複雑な感情を反映している形だ。
   (略)


   イスラム教を国教とするイランでは、書籍を販売する場合、
   イスラム的価値観に合致しているかの審査がある。
   出版社の担当者は「ビジネスの本として許可をもらっている」と語る。
   トランプ氏の大統領就任直後に翻訳され、
   少なくとも10冊が流通している。
   (略)


   女性店主(35)は
   「米国第一主義で、自国民のために政策を進めるトランプ氏がいる
   米国のことをうらやましいと思う気持ちがあり、興味がわくようだ」と説明。
   「制裁を受けて、表面上はイラン人は米国を敵視しているが、
   実は憧れでもある」と付け加えた。
                     (テヘラン=杉崎慎弥)



池上彰さんも近著『わかりやすさの罠』(集英社新書、2019)
イランの人々を観察しています(「読書事情から見えるその国の将来」)。
中国、ミャンマーでの書店の盛況ぶりと比較して
中東各国では空港の待合室で本を読む人を見かけませんでした。
唯一の例外がイランだったと池上さんは書いています。


   興味深いのは、同じイスラム教徒でも、
   イランの空港の待合室では、本を読んでいるイラン人がいたことです。
   長きにわたるアメリカとの緊張関係が続き、
   国内政治においてもしばしば混乱が伝えられるイランですが、
   やがてはベトナムや中国の例にならうのではないか、と私は考えています。
                               (p.175)


トランプの著書を熱心に読み、
「敵国」であるアメリカの動向まで研究している人たちが一定数いる
イランの民度はかなり高いのではないかと僕は思います。
さすがに中東での主導権をサウジアラビアと争う国だけのことはあります。
杉崎記者、情報性の高い記事をテヘランから送ってくれました。


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