トランプ大統領メッセージ解読競争


トランプ米国大統領の意向を解読する競争で
メディアの実力が推し量れる。
もっとも大統領選予測では
ロサンゼルス・タイムスなど一二の例外を除けば
ほぼ全世界のメディアが外したことを忘れてはならない。
朝日新聞朝刊連載「池上彰の新聞ななめ読み」。
トランプ大統領就任演説日本語訳を
各新聞社版で読み比べ分析した記事だ。



   演説では聖書からの引用が出てきます。
   その部分について、各紙は担当者が訳している文章ですが、
   朝日だけは「旧訳聖書詩編133からの引用」と明記し、
   「見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び」
   という日本聖書協会訳を使用しています。
   ここに教養の違いが出た気がします。
   (朝日2017年1月27日朝刊より引用)



朝日連載だからと言って
朝日を無条件に持ち上げることを池上は決してしない。
だから信頼できる。


手元の新共同訳で詩編133全文を引用してみよう。


   都に上る歌。ダビデの詩。


   見よ、兄弟が共に座っている。
   なんという恵み、なんという喜び。


   かぐわしい油が頭に注がれ、ひげに滴り
   衣の襟に垂れるアロンのひげに滴り
   ヘルモンにおく露のように
   シオンの山々に滴り落ちる。


   シオンで、主は布告された
   祝福と、とこしえの命を。


中型引照つき聖書 旧約続編つき - 新共同訳

中型引照つき聖書 旧約続編つき - 新共同訳


さらに佐藤優はこう分析する。


   トランプ大統領が、
   キリスト教徒のみが聖典とする新約聖書ではなく、
   キリスト教徒、ユダヤ教徒の両者が聖典とする
   旧約聖書から、あえて引用し、
   イスラエルと全世界のユダヤ人に
   「私はあなたたちと価値観を共有しています」
   というメッセージをトランプ大統領は送ったのだ。
   トランプ政権の外交は、
   親イスラエル政策を基調とすることになろう。
   ( 佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol.101より引用)


ここまで読んで初めて
トランプ大統領が就任演説というもっとも重要なメッセージに
聖書から詩編133冒頭を引用した意味が分かる。
池上、佐藤ふたりのプロフェッショナルの補助線のおかげで
情報の読み解き方を学ぶことになる一例だ。



(文中敬称略)