構想か、抗争か、検事総長人事

クリッピングから
朝日新聞2020年2月28日朝刊
池上彰の新聞ななめ読み」
検事長の定年延長 その答弁、怒るべきです


そうか、そこが問題だったのか。
池上さんの解説で今月も問題の核心に入っていくことができました。


  (略)
  私が気になっているのは東京高検(東京高等検察庁)のトップである
  黒川弘務検事長の定年延長を安部内閣が決めたことです。


  (略)
  これまでの新聞各紙の報道を総合すると、次のようなことです。
  国家公務員法では原則60歳が定年と定められているが、
  退職により公務に著しい支障があれば定年を延長できる。
  ところが国家公務員であっても検察官には検察庁法という別の法律が適用され、
  検察官は63歳、検事総長は65歳が定年と決められている。
  検察官は、普通の国家公務員とは別格の扱いなのです。
  その分、定年延長の規定はありません。


  東京高検の黒川検事長は今年の2月8日で63歳になることから、
  2月7日に退職することになっていました。
  ところが安部内閣が、黒川氏の定年退官直前の1月31日、
  国家公務員法の規定を使って、黒川氏の定年を8月7日に延長しました。
  すると、どうなるのか。
  

  現在の稲田信夫検事総長が65歳になるのは来年8月。
  まだ先なのですが、歴代の多くの検事総長は2年務めて勇退していました。
  この慣例に従うと、今年の7月ごろに勇退するのではないかと見られています。
  その一方、黒川氏のライバルである
  林真琴・名古屋高検検事長は7月に63歳を迎えます。
  そこで稲田検事総長は、黒川検事長が定年退官した後、
  林検事長が定年になる前に勇退して林氏に検事総長の座を譲る。
  これが検察内部の人事構想だったと言われています。


  しかし安部内閣閣議決定で、黒川氏は8月まで現職にとどまります。
  そこで稲田氏が7月いっぱいで勇退すれば、
  後任に黒川氏を任命することが可能になりました。
  検事総長の任命権は内閣にありますが、
  検察官は誰を起訴するかしないか判断する唯一の機関。
  政治家を捜査することもあります。
  その特殊性に配慮して、内閣は検察内部の人事構想を尊重していました。
  それなのに安部内閣が人事に介入したのではないかというのが、
  今回のニュースです。
  (略)


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これは官邸・検察の、
人事構想なのか、人事抗争なのか。
読んでいるだけで頭が痛くなりそうです。
それでも解説のおかげで「抗争」の構図は見えてきました。
池上さんは今月の「ななめ読み」をこう締めます。


  今回、安部内閣が黒川氏の定年延長を決めた理由について
  森雅子法相は「重大かつ複雑、困難な事件の捜査・公判に対応するため」
  などと答弁したそうです(2月4日付朝日朝刊)。
  この答弁だと、黒川氏がいなくなると、
  検察庁には仕事を引き継ぐことができる人材がいないという意味に取れます。
  日本の検察にはそんなに人材がいないのか。
  検察官も怒ってしかるべきではありませんか。


政府にも検察にも辛口です。
「抗争」するどちらにも国民の視点が見られないことを
辛辣に伝えているように僕には思えました。
7月から8月にかけて検事総長人事がどうなるか、
この記事を頭に入れて睨んでおきましょう。