名店「珈穂音」はなぜ54年の歴史に幕を閉じたか



スクラップブックから
「ベルク通信」VOL.292(2018年8月1日発行)
新宿のビア&カフェの名店 BERG(ベルク)の機関紙。
店内で配布。サイトでも閲覧できる。



店長の巻頭コラムから引用する。


   「珈穂音(カポネ)」こそ文化遺産


   (略)
   先月、紀伊國屋書店本店のビルの地下にあった
   名店「珈穂音」が54年の歴史に幕を閉じました。
   あのビルは(ここの駅ビル(引用者注:ルミネ)と同じく
   東京オリンピックの64年施工)
   都の歴史的建造物に選定されたので、
   紀伊國屋さんはもう建て替えを理由に
   テナントに立ち退きを迫れない筈です。


   ご主人に伺ったら、書店の若い課長の
   「これからは大手の時代」という一言(挑発)にキレて
   退店を決めたとか。
   女将さんによれば、自分や息子さんに
   一言も相談せず独断で。


   アカン!まだまだやれるのに!
   利用された方ならおわかりでしょうが、
   あのお店の使い勝手の良さは奇跡です。
   一朝一夕で生み出せるものではありません。
   あの場所で長い年月をかけて
   お客様や業者さんと共に築き上げてきたものです。
   (略)


   大手系列店を否定するつもりはありません。
   名店に個人も大手もない。
   個人経営だから無価値とか大手系列だから価値がある
   という考えにそうとは限らないと言いたいだけです。
   それがベルク本にも書いた「大手信仰批判」ですが、
   もし個人商店一掃が紀伊國屋書店の方針なら
   ベルク本は正直言って置いてほしくないです。
                      (店長)


ベルクはルミネ(親会社はJR)から不当に撤退を迫られたとき、
店で働く人、客として通う人、事件を知った人たちの
粘り強い抗議で、いまも存続している名店だ。
それだけに紀伊國屋書店担当課長の「売り言葉」にカッとして
退店を決めてしまった「珈穂音」ご主人の即断が
無念でならないのだろう。


僕は「珈穂音」に行ったことはないが、
紀伊國屋書店のファンである。
経済合理性だけにとらわれ、
書店のブランドイメージを毀損しているのに気づかない
担当課長の発言を残念に思う。