佐藤優『友情について—僕と豊島昭彦君の44年』(講談社、2019)

佐藤優さんのメルマガ「インテリジェンスの教室」
本書の生まれる経過を逐一読み、関心を持っていた。
発売日に書店で注文した(その書店には翌日入荷した)。
佐藤優(執筆協力:豊島昭彦)『友情について—僕と豊島昭彦君の44年』
講談社、2019)を読む。


友情について 僕と豊島昭彦君の44年

友情について 僕と豊島昭彦君の44年


「はじめに」から引用する。


   この作品を書くきっかけとなったのは1通のメールだ。
   2018年5月に埼玉県立浦和高校(浦高)の同窓生が集まる機会があった。
   そのとき1年9組で隣の席に座っていた豊島昭彦(とよしまあきひこ)君と
   40年ぶりに再会した。
   豊島君とは波長が合い、とても親しくしていた。
   (略)


   高校1年の夏、私がソ連・東欧を旅行したときの経験を
   自著『十五の夏』(幻冬舎)にまとめたが、
   浦高関係者の中で実名で登場してくる数少ない1人だ。
   (略)


十五の夏 下

十五の夏 下


   豊島君は会社(引用者注:日本債権信用銀行)の破綻、
   新しい上司との軋轢(あつれき)や同僚たちのリストラなど
   人生の荒波にも襲われ、2度、転職している。


   40年ぶりの再会から約5ヵ月経った10月15日の深夜、
   その豊島君からメールが届いた。
   発信時刻は22時48分だった。
   (略)


   その後、豊島君は、
   がんを専門とする国立がん研究センター中央病院で診察を受けた。
   すい臓を原発とするがんは、肝臓だけでなく、
   リンパにも転移していた。
   もはや手術は不可能な「ステージ4」であると診断された。
   現在は、抗がん剤治療を受けている。
   (略)


   10月19日と30日に豊島君と会って、突っ込んだ話をした。
   ステージ4の膵臓がん患者の余命は長くない。
   中央値は291日だ。
   豊島君の持ち時間には限りがある。
   (略)


   私は、「僕にできることならば何でもする。
   ただし、話を聞くだけでなく、
   君の人生について本にまとめてみないか。
   家族、職場の同僚や部下、学校の後輩たちに伝えたいことを
   文字にするとよい」と提案した。
   こうして、豊島君との共同作業が始まった—。


1959年生まれの豊島君、
1960年生まれの著者の人生を交互に追いながら、
44年ぶりに再び交点を持った浦高同級生二人の物語が綴られる。
章立ては以下の通り。


   はじめに
   I. 友情(フィリア)
   II. 礎(いしずえ)の時代
   III. 疾風怒濤(しっぷうどとう)
   IV. 灯火(ともしび)
   あとがき
   付記


本書を読みながら、人生の一時期親しく付き合い、
先立たれた友人数人の顔が何度か思い浮かんだ。


限られた時間、人的ネットワークを最大限に活かし、
一般読者である僕たちに通じる内容に仕上げた力に感銘を受けた。
著者、執筆協力者のふたりだけでなく、
講談社現代新書・青木肇編集長(浦高で著者の10年後輩)はじめ
本書をタイムリーに世に送り届けたチームのみなさん全員に
一読者として拍手を送る。


小説 豊国廟考 ―夢のまた夢―

小説 豊国廟考 ―夢のまた夢―

(豊島昭彦さんが上梓した作品。浦高時代から小説家になる夢を持っていた)


(2018年4月から佐藤さんは母校・浦高で総合科目を担当している)


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追記:

6月7日早朝、豊島昭彦さんが天国に旅立ちました。
ご冥福をお祈りします。