佐藤優評:田原総一郎『堂々と老いる』(毎日新聞出版、2021)

クリッピングから
毎日新聞2021年12月18日朝刊
「今週の本棚」佐藤優 評(作家・元外務省主任分析官)
『堂々と老いる』(田原総一郎著/毎日新聞出版・1430円)


  人は誰であっても死を免れることができない。
  80代後半となると人生の終わりをかなり意識するようになると思うが、
  現在87歳(1934年4月15日生まれ)のジャーナリスト田原総一郎氏は、
  死についてあれこれ考えるよりも、
  ひたすら生きることだけを考えるという選択をしたようだ。


  加齢とともに記憶力、体力が減退するが、
  それは仕方ないことと受け止め
  現実的に対処することを田原氏は勧める。
  具体的には、疲れたら横になることだ。


  <以前は当たり前にできていたことができなくなるという経験は、
  加齢とともに増えていく。
  僕の場合、75歳を過ぎたあたりから、
  本を読んでいて、途中から疲れて読めなくなることが増えたきた。
  /新聞や本、それから仕事の資料と、とにかく僕には読むものが多い。
  もちろん趣味で読む本もあり、以前は疲れを感じることなど皆無で、
  時間を忘れるほど夢中でそれらを読んでいたものだ。


  /しかし、今はその体力がなくなってしまった。
  (中略)目が文字を追えなくなる、読むのが面倒になる、
  そんなとき、僕は無駄な抵抗をせず、
  15分でも30分でも目を閉じて横になることに決めた。
  そのまま短い昼寝をすることもある。
  /実は、この15分から30分の昼寝が
  疲労回復にとても効果を発揮する>
  (略)


  読書や友人との交遊で常に刺激を受けながら、
  健康に関しては信頼できる主治医を見つけ、
  不調があれば恐(こわ)がらずに病院で診察を受ける。
  また、毎日の生活のリズムを整えて、ウオーキングを欠かさない。
  神や死などの実証できない面倒なことについて考えないのが
  田原式老後術の秘訣(ひけつ)だ。


佐藤は自分についてこう書いている。


  評者は現在、前立腺がん、末期腎不全と闘病中だが、
  人生の持ち時間が限られてくると、
  学生時代の純粋な友情が、ほんとうに貴重に感じる。



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