極私的ベスト2020<書籍篇>

2020年に読んだ書籍から極私的ベスト(©haruharuyさん)を選んでみました。
何かの参考、ヒントになればうれしいです。


1 イアン・カーショー/三浦 元博 ・竹田 保孝訳 
  『地獄の底から——ヨーロッパ史1914-1949』
 (白水社、2017)
  同/三浦元博訳『分断と統合への試練——ヨーロッパ史1950-2017』
 (白水社、2019)



一級の歴史家が史料を丹念に読み込み、
構想力豊かにまとめたヨーロッパ史二巻本。
筆力に圧倒された。


2 多和田葉子『地球にちりばめられて』(講談社、2018)
『星に仄(ほの)めかされて』(講談社、2020)


地球にちりばめられて

地球にちりばめられて

星に仄めかされて

星に仄めかされて


祖国も母国語も喪失することはどんな体験なのか。
多和田の語る物語にぐいぐい引き込まれ、
自分も世界を旅している気持ちになる。


3 原泰久『キングダム』(第1-58巻)
 (ヤングジャンプコミックス、2010-20)


キングダム 58 (ヤングジャンプコミックス)

キングダム 58 (ヤングジャンプコミックス)

  • 作者:原 泰久
  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: コミック


世の中は『鬼滅の刃』の年だった。
僕には『キングダム』の一年だった。
神谷純監督と組んだ第一期アニメ版も秀逸。


4 矢野久美子『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所』
  (みすず書房、2002)



矢野が東京外国語大学へ博士論文として提出した作品を書籍化。
みずみずしい筆致で、従来のアーレント像を揺さぶる野心作。


5 イスマイル・カダレ/村上光彦訳『夢宮殿』
 (東京創元社、1994/2002)


夢宮殿 (創元ライブラリ)

夢宮殿 (創元ライブラリ)


国民の夢まで管理する国家の官吏が主人公。
カダレはアルバニアの至宝的存在の小説家。


6 石井妙子 『女帝 小池百合子』(文藝春秋、2020)


女帝 小池百合子 (文春e-book)

女帝 小池百合子 (文春e-book)


このノンフィクションを読み、
小池百合子の遍歴を解析する補助線を引くことができた。
都知事としての次の行動、発言も予測可能になる。


7 辻村深月『ツナグ』(新潮文庫、2012)
  『ツナグ——想い人の心得』(新潮社、2019)


ツナグ(新潮文庫)

ツナグ(新潮文庫)

ツナグ 想い人の心得

ツナグ 想い人の心得


この世とあの世を繋ぐ人、それが「ツナグ」。
「ツナグ」にもできることと、できないことがある。
明快な一線をルール化することで読者が共有できるシリーズになった。
続篇が読みたい。


8 矢部太郎『大家さんと僕 これから』(新潮社、2019)


大家さんと僕 これから

大家さんと僕 これから

  • 作者:矢部 太郎
  • 発売日: 2019/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


このシリーズはひとりの作家(漫画家)が
一生に一作だけ描ける物語(ノンフィクション?)かもしれない。
それを手にできた僕たち読者はなんと幸福か。


9 富岡幸一郎使徒的人間——カール・バルト』(講談社、1999)



難解な文章で知られる神学者カール・バルト
富岡の道案内によって接近できた気がする。


10 手嶋龍一『ウルトラダラー』(新潮文庫、2007)


ウルトラ・ダラー (小学館文庫)

ウルトラ・ダラー (小学館文庫)


小説は手嶋の余技ではないかとの思い込みは心地良く裏切られた。
ノンフィクションでは書けない領域があることを知った。


次点 フランツ・カフカ池内紀訳『城』(白水uブックス、2006)




読み解かれることを拒絶するような小説。
けれど再読し、筆写していると、その拒絶感が快感になってくる。
佐藤優中村うさぎ両講師の同志社講座(2019-21)テキストブック。
池内の訳がいい。


次点 Haruki Murakami/Philip Gabriel & Ted Goossen訳
   "Killing Commendatore" (Vintage Books、2019)



二人の翻訳者がどの部分をどう分担しているのか、
僕の英語力ではまるで見当がつかない。
音読したり筆写したり、あれこれ楽しんでいるテキスト。
僕の英語トレーニング・ブックでもある。


2021年、お互い、豊かな読書生活ができますことを!