2020年に読んだ書籍から極私的ベスト(©haruharuyさん)を選んでみました。
何かの参考、ヒントになればうれしいです。
1 イアン・カーショー/三浦 元博 ・竹田 保孝訳
『地獄の底から——ヨーロッパ史1914-1949』
(白水社、2017)
同/三浦元博訳『分断と統合への試練——ヨーロッパ史1950-2017』
(白水社、2019)
地獄の淵から:ヨーロッパ史1914-1949 (シリーズ近現代ヨーロッパ200年史 全4巻)
- 作者:イアン・カーショー
- 発売日: 2017/02/22
- メディア: 単行本
分断と統合への試練:ヨーロッパ史1950-2017 (シリーズ近現代ヨーロッパ200年史 全4巻)
- 作者:イアン・カーショー
- 発売日: 2019/10/31
- メディア: 単行本
一級の歴史家が史料を丹念に読み込み、
構想力豊かにまとめたヨーロッパ史二巻本。
筆力に圧倒された。
2 多和田葉子『地球にちりばめられて』(講談社、2018)
『星に仄(ほの)めかされて』(講談社、2020)
祖国も母国語も喪失することはどんな体験なのか。
多和田の語る物語にぐいぐい引き込まれ、
自分も世界を旅している気持ちになる。
3 原泰久『キングダム』(第1-58巻)
(ヤングジャンプコミックス、2010-20)
- 作者:原 泰久
- 発売日: 2020/06/19
- メディア: コミック
キングダム [レンタル落ち] 全19巻セット [マーケットプレイスDVDセット商品]
- 発売日: 2012/09/07
- メディア: DVD
世の中は『鬼滅の刃』の年だった。
僕には『キングダム』の一年だった。
神谷純監督と組んだ第一期アニメ版も秀逸。
4 矢野久美子『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所』
(みすず書房、2002)
- 作者:矢野 久美子
- 発売日: 2014/09/11
- メディア: 単行本
矢野が東京外国語大学へ博士論文として提出した作品を書籍化。
みずみずしい筆致で、従来のアーレント像を揺さぶる野心作。
5 イスマイル・カダレ/村上光彦訳『夢宮殿』
(東京創元社、1994/2002)
- 作者:イスマイル・カダレ
- 発売日: 2012/02/29
- メディア: 文庫
国民の夢まで管理する国家の官吏が主人公。
カダレはアルバニアの至宝的存在の小説家。
このノンフィクションを読み、
小池百合子の遍歴を解析する補助線を引くことができた。
都知事としての次の行動、発言も予測可能になる。
7 辻村深月『ツナグ』(新潮文庫、2012)
『ツナグ——想い人の心得』(新潮社、2019)
この世とあの世を繋ぐ人、それが「ツナグ」。
「ツナグ」にもできることと、できないことがある。
明快な一線をルール化することで読者が共有できるシリーズになった。
続篇が読みたい。
8 矢部太郎『大家さんと僕 これから』(新潮社、2019)
- 作者:矢部 太郎
- 発売日: 2019/07/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
このシリーズはひとりの作家(漫画家)が
一生に一作だけ描ける物語(ノンフィクション?)かもしれない。
それを手にできた僕たち読者はなんと幸福か。
9 富岡幸一郎『使徒的人間——カール・バルト』(講談社、1999)
難解な文章で知られる神学者カール・バルトに
富岡の道案内によって接近できた気がする。
10 手嶋龍一『ウルトラダラー』(新潮文庫、2007)
小説は手嶋の余技ではないかとの思い込みは心地良く裏切られた。
ノンフィクションでは書けない領域があることを知った。
次点 フランツ・カフカ/池内紀訳『城』(白水uブックス、2006)
- 作者:フランツ カフカ
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 新書
読み解かれることを拒絶するような小説。
けれど再読し、筆写していると、その拒絶感が快感になってくる。
佐藤優・中村うさぎ両講師の同志社講座(2019-21)テキストブック。
池内の訳がいい。
次点 Haruki Murakami/Philip Gabriel & Ted Goossen訳
"Killing Commendatore" (Vintage Books、2019)
Killing Commendatore: A novel (English Edition)
- 作者:Murakami, Haruki
- 発売日: 2018/10/09
- メディア: Kindle版
二人の翻訳者がどの部分をどう分担しているのか、
僕の英語力ではまるで見当がつかない。
音読したり筆写したり、あれこれ楽しんでいるテキスト。
僕の英語トレーニング・ブックでもある。
2021年、お互い、豊かな読書生活ができますことを!