先日「イラストレーター安西水丸展」を見た折に
なんだか気になっていた一冊を図書館で借りてきた。
安西水丸『大衆食堂へ行こう』(朝日文庫、2006)を読む。
「あとがき」から引用する。
(略)
ぼくはどちらかというと子供の頃から小食なほうで、
それに時々自分が何を食べたいのかわからない時があって、
そんな時は決まって定食屋に入りました。
定食屋、つまり大衆食堂には
ずらりと料理名が並んでいるので助かるのです。
壁に張り出されたメニューには、ある種のアートを感じます。
あの定食屋の壁がそのまま美術館に運ばれたら、
魅力的なモダンアートになるだろうとおもうのです。
(略)
(p.232)
本書には2000年から2005年にかけて水丸さんが訪れた
東京の大衆食堂が55軒、楽しいイラスト入りで紹介されています。
(展覧会では原画に見惚れました)
掲載された店の中で僕が行ったことがあるのは、
14. ゆたか(戸越銀座) 戸越銀座の手作り食堂
34. めし処こづち(恵比寿) 気合いのこもった恵比寿の定食屋
44. たけの(築地) 築地の底力がここに有り
の3軒でした。
いずれも、メニュー豊富、実直な料理、お手頃なお値段で
大好きな大衆食堂ばかりです。
イラストを見て、エッセイを読んでいると、
店で過ごした時間が記憶の中で再現されて、また寄りたくなります。
初出:雑誌『一個人』(2000.12〜2005.6)
(水丸さんの仕事を集大成した、見応え読み応えのある一冊)