クリッピングから
朝日新聞2021年9月25日朝刊
「折々の言葉」(鷲田清一)● 2155
人生は、定めなさがいくらか少ない夢である
人がもし毎晩同じことを夢見ていたら、
それは日頃じかに見ている物事と同じほどにリアルだろうと、
17世紀のフランスの思想家は言う。
『パンセ』(前田陽一・由木康訳)から。
私が私である根拠(アイデンティティー)も、
報道される「事件」や「事実」も、
一定の筋書きに沿って語りだされる
物語である可能性を排除できない。
現実と非現実を区別する最終的な基準は
おそらく人間の内部にはない。
鷲田さんはパスカルの言葉を引用しながら
恐ろしく難しいことを、極めて簡潔に記している。