トミヤマユキコの「今年の3点」

クリッピングから
朝日新聞2021年12月25日朝刊
朝日新聞書評委員「今年の3点」
トミヤマユキコ


どんな三冊を選んでいるかで、
その書評家に興味を持つ。
トミヤマユキコの三点が僕には面白かった。


  ①東京の生活史
  (岸政彦編、筑摩書房・4620円)

  ②開局70周年記念 TBSラジオ公式読本
  (武田砂鉄責任編集、リトルモア・1760円)

  ③一度きりの大泉の話
  (萩尾望都著、河出書房新社・1980円)


  ちょっとしたことは
  ネットで調べればすぐわかってしまう世の中で、
  本でなくては読めないことが書かれている本が、
  とても大切に思えた。
  ①はまさにそういう本。
  150人の人生を150人が聞いて書く。
  とにかく分厚い。
  東京で暮らす知らない誰かの人生を
  浴びるように読む愉悦があった。


  ②はラジオの世界から採集された声の数々。
  話芸の達人たちの語りだから、面白さは折り紙つきだし、
  資料価値も高いと感じた。


  書評欄で取り上げた本の中で印象に残っているのは③。
  読んだ時の衝撃が、今も忘れられない。
  少女マンガ界の見え方が変わる可能性のある一冊を
  どのように紹介するか、本当に腐心した。
  ちなみに、読んだ人たちと感想を言い合う機会が
  もっとも多かったのもこの本だった。

                   (ライター)


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