何にでも成れると思う日もあった(河野節子)

クリッピングから
讀賣新聞2022年1月24日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週の好きな歌、抜き書きします。
4首あります。


  何回も生まれ変わってプラごみは
  ヒトより深く世界を学ぶ

         狭山市 えんどうけいこ


    【評】リサイクルという名の
       輪廻(りんね)転生をするプラスチック。
       海で、山で、街で…世界中のいたるところで、
       またゴミになる過程を生きる。
       学ばない人類への警告と皮肉が、
       ユニークな発想で伝わってくる。


  傘袋再利用すると軒下に
  へびの抜け殻のごと母は干す

         神戸市 米谷茂


モデルが現実に側にいなくては
こうした歌の発想は生まれませんね。
「へびの抜け殻」に見立てた観察力、
ニヤリとしました。


  七回の下書き越えて句点打つ
  卒業文集清書終えたり

        船橋市 矢島佳奈


素直な歌だけれど、
ああ卒業するって、そんな気持ちだったかなぁ、
と思い出しました。
そうは書いていないのに「別れ」を行間に感じます。


  何にでも成れると思う日もあった
  薄味にした味噌汁を食む

         韮崎市 河野節子


矢島さんの歌と対にして読み返すと
しみじみ味わいがありました。
人生の持ち時間の違いによって、
感じ方は変わるものなのですね。
「薄味」の言葉づかいが好きです。


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