ハイデガーの次はアリストテレスか。
Eテレ「100分de名著」のプロデューサーA、
剛球で攻めてくるなぁ。
……と身構えていたのですが、
5月の指南役・山本芳久さんの解説に引き込まれていきました。
テキスト「はじめに」から引用します。
私は『ニコマコス倫理学』と三回にわたって出会っています。
一回目の出会いは大学生のときでした。
私は高校時代から哲学に関心があり、
様々な入門書やプラトンの対話篇やニーチェの著作など、
比較的読みやすい作品を読んでいたのですが、
より本格的な哲学の古典として初めて通読したのは、
大学に入ってから手にした『ニコマコス倫理学』でした。
「通読した」とわざわざ言うのは、
その前にいくつも挫折があるからです。
たとえばカントを読もうとすると
「悟性(ごせい)」という言葉が出てきて、
「理性」という言葉も出てくる。
何が違うのだろうかと国語辞典などを引いてみても、
意味がよくわからずどうしても先に進めない。
ハイデガーもスピノザも、
同じように何ページ目かで読めなくなりました。
それに対して『ニコマコス倫理学』は、
途中にわからない部分はいろいろとあるものの、
最後まで読み通すことができた。
その意味で、この本は哲学研究者としての
私の出発点と言える本であり、非常に思い出深い書物なのです。
わからないところがありつつ読めたというのは、
そこに書かれていた「幸福とは何か」
「人生の目的とは何か」といった内容が、
自分自身の関心と重なっていたからだと思います。
それは、たまたま私がそうだったというだけでなく、
多くの人にもあてはまるのではないでしょうか。
『ニコマコス倫理学』は多くの人にとって、
哲学に入っていくための出発点になりうる本なのです。
(pp.5-6)
番組はあと3回。
講義が今後どんな展開を見せるか、
楽しみです。