ようにを消した(袴田朱夏)

クリッピングから
讀賣新聞2022年5月16日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  君といてどんな空にも飛び立てる
  綿毛のような一日だった

      大和郡山市 大津穂波


    【評】ふわふわした気分と、一緒にいられることの喜びを、
       最大限に表現した一首だ。
       「どんな空にも」には、
       「どんな未来であっても」という決意と勇気が感じられる。


  見下したようにと書けば
  見下したようでしかない ようにを消した

             京都市 袴田朱夏


    【評】慣用的な婉曲(えんきょく)表現が、
       本当に自分の心に沿っているのかを点検することは、
       とても大事だ。
       言葉を厳しく丁寧につかう意志が、
       そのたゆたいとともにリアルに伝わってくる。


  吾輩は戦争である
  国民に賛否求めたことはまだない

        上尾市 関根裕治


    【評】もちろん『吾輩は猫である』が下敷き。
       結句が、これからも求めることはないだろうという
       戦争の本質に迫るひと言になっている。