花田菜々子評:武田砂鉄『べつに怒ってない』(筑摩書房、2022)

クリッピングから
毎日新聞2022年8月27日朝刊
「今週の本棚/話題の本」花田菜々子


(イラストも著者)


  政治やフェミニズムなどの分野で数多くの著作を出版し、
  社会の不正や差別を鋭く糾弾している武田砂鉄。
  だが、最新のエッセー集『べつに怒ってない』(筑摩書房・1760円)では、
  その毅然(きぜん)としたイメージが
  ガラリと変わるようなのんびり感に全体が満ち溢(あふ)れている。


  著者自身も「だからなに、と思われそうな文章ばかり」
  だと本文の中で断っているが、
  著者にありがちな謙遜ではなく、ほんとうにその通りなのだ。


  歯医者の予約、すれ違った小学生が話していた言葉、
  喫茶店で品切れしていたケーキ、
  エレベーターから出られなくなっていた蛾(が)……と、
  どうでもよすぎる話題のオンパレード。
  もしこの中から一編だけを読めば
  「ああ、今回はネタ切れだったのかな?」と思うような題材だ。
  だが、全編がそうなのだ。
  怖い。
  確信犯だ。


  そしてハズレ回のような佇(たたず)まいをしているくせに、
  読むのがやめられなくなるくらい全部が面白い。
  (略)


僕も寝しなの一冊に本書を枕元に置いてます。
パラッと開いて読み出すと、なんとなく読んでしまう。
この感じ、ラジオ番組で贔屓のパーソナリティのトークを聴くのに似ています。
砂鉄さんのTBSラジオ「アシタノカレッジ」(金曜22:00-24:00)
ほぼ毎週聴いてます。
特に澤田大樹記者と一週間のニュースについて語る「ニュースエトセトラ」は絶品!