五木寛之/佐藤優『異端の人間学』(幻冬舎新書、2015)

五木寛之セレクション I 国際ミステリー集』
(東京書籍、2022)の巻末対談に続いて連読。
五木寛之佐藤優『異端の人間学』(幻冬舎新書、2015)を読む。



「第三部 詩人が尊敬される国」から引用する。
ロシアでは詩人が一国の首相より尊敬され、
庶民でもプーシキンなどの詩人を暗唱できるというくだりで。


  五木 よく言われるのは、日本人のほとんどの人が
     ある俳人の俳句を三つ言えると、
     その人は国民的俳人だそうです。
     芭蕉(ばしょう)(1644~1694)は言えますよね。
     蕪村(ぶそん)(1716~1783)になるとちょっと怪しい人もいる。
     小林一茶(いっさ)(1763~1827)はまあ言えるんじゃないか。
     こういうふうに挙げていくと、
     三つの句がスッと出てくるような人って、
     僕にしても二、三人しかいない(笑)。


  佐藤 詩になるともっと少ないし、
     現代詩になると壊滅的じゃないですか。


  五木 だって現代詩は目で読むしかないんだもの。
     谷川雁(たにがわ がん)(1923~1995)さんも
     一時期はものすごい熱狂的なファンがいたけれども、
     それにしたって谷川さんの詩を一行誰かが読むと、
     全員がそれを唱和するという雰囲気は1950年代はあったけど、
     いまはないじゃないですか。
     だから、非常にこの国は特異な国だと思うんです。


  佐藤 いや、でもそこのところはむしろ演歌に流れていったんですよ。


  五木 ああ、そうかもしれません。
     これは三つは出てくるね(笑)。
     阿久悠(あく ゆう)(1937~2007)の作詞で三曲挙げろと言ったら、
     誰だってすぐ出てくる。
     そう言えばそうですね。


  佐藤 おそらく詩を暗唱するという習慣は、
     節回しが加わって演歌に流れたんですよ。


  五木 なるほど。

                     (pp.129-130)


(巻末に51頁の五木・佐藤対談解説掲載)


(上記2点、本書で五木、佐藤がそれぞれ推薦した図書。各全7巻、全3巻。
 内村著作集第7巻解説を佐藤が担当)