カルピスの原液みたいな淋しさを(四之宮光里)

クリッピングから
讀賣新聞2023年2月27日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  カルピスの原液みたいな淋しさを
  泣ける映画で泣いて薄める

         飯能市 四之宮光里


    【評】映画で泣くことは、
       結局淋(さび)しさを薄めているだけではある。
       けれど、薄まっていることもまた事実。
       淋しさの本質と映画の効用が、
       カルピスを用いたユニークな比喩で、
       みごとに表現された。


  封筒に手を入れて風通したり
  君へ着く頃には春の風

      大和郡山市 大津穂波


    【評】手紙は、距離だけでなく時間の旅もする。
       その時差を慈しむような感覚。
       相手に届く時を思いやる想像力が素敵(すてき)だ。


  価値観の違いがなんだぼくは「柿」
  あなたは「ピー」が好きで円満

         上尾市 関根裕治


    【評】価値観が全く同じ人などいない。
       柿ピーのオカキとピーナッツで示した、
       ユーモアたっぷりの異議申し立てに、
       私も一票。